2008年2月20日水曜日

株式 市況

企業年金マネジメントの考え方と実務

本書は著者がここ8年あまり年金業務の従事した実体験に基づき、特に年金資産運用を中心に問題点をどう見出し、どう考え、どう解決したかが極めて具体的に書かれている。今迄学者、運用機関、コンサルタントが年金資産運用について書いた書物は数多く出版されているが、本書のように年金基金サイド側に立ったものは初めてではないかと思う。年金運用者共通の悩みをどのように著者が解決してきたのか等業務遂行上非常に参考になる点が多く、年金資産運用業務に携わる人間には是非一読を薦めたい。

年金資産運用の書籍と聞くと、 ・官公庁や業界団体の刊行物にありがちな「制度の概要は以上。あとは預かり知らぬ」本 ・運用機関やコンサルタントによる「ウチと契約してくれたらもっと噛み砕いて説明しまっせ」本 ・海外の文献を難解な日本語で訳しただけの「ポータルサイトの翻訳機能といい勝負」本 ・野党議員や労組系にありがちな「とにかく株式投資はケシカラン」本 ・国家破産や預金封鎖といった終末論(ハルマゲドン)を煽って宣伝する「ハルマゲ本」というパターンが殆どで、当事者である年金基金が、投資理論を踏まえた上でどう行動するべきかにまで言及した書籍は、これまで皆無であった。そんな折、満を持して刊行されたのが本書。これまで年金運用の世界では「分散投資」「長期投資」「運用基本方針の遵守」etcが喧伝されて来たものの、「実際に効果はあるんやろか?」と訝しがる向きも少なくないのが実情である(かくいう私も・・・(汗))。しかし筆者は、その重要性を説くだけに留まらず、自ら実践を以ってその有効性を見事に実証して見せており、こうした理論と経験則の調和が本書にこれ以上ない説得力を与えている。また、類書では概して軽んじられがちな「受託者責任」についての考察も詳しく、運用管理の適正な執行のためには欠くべからざる概念であることを改めて認識させられた。ともかく、年金資産運用を語る上で欠かせない一冊として、今後広く読み継がれることは必至。特に、大勢順応の後追いで資産を債券にシフトした結果、2003年夏以降の株式市況回復の恩恵に与れなかった業界関係者は、本書を熟読のうえ猛省すべし!

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